お金は欲しい。
できることなら、今よりもう少し余裕のある生活がしたい。
仕事でも結果を出したいし、収入も増やしたい。
でも、そのためなら何をしてもいいのかと言われると、やっぱり違う気がする。
そんな当たり前のようで、意外と答えの難しいことを考えさせてくれたのが、渋沢栄一の『論語と算盤』でした。
この本の中心にある考え方は、とてもシンプルです。

人として正しく生きることと、お金を稼ぐことは両立できる。
最初にこの考えを知ったとき、私は少し意外に感じました。
「道徳」と「利益」。
「人のため」と「自分のため」。
どこか正反対のものだと思っていたからです。
でも読み進めていくと、この二つを分けて考えること自体が、少し違うのかもしれないと思うようになりました。
「論語」と「算盤」を一緒に考える
タイトルにある「論語」は、人としてどう生きるか。
そして「算盤」は、商売や利益、お金を表しています。
一見すると、まったく別のものです。
人として立派であろうとすれば、お金のことばかり考えるのは良くない。
商売で成功したければ、きれいごとだけでは通用しない。
そんなふうに考えたくなるところがあります。
でも、渋沢栄一はこの二つを切り離しません。
むしろ、
正しい考え方がなければ、商売は長く続かない。
そして、
利益を生み出す力がなければ、理想だけでは社会を豊かにできない。
その両方が必要だと考えます。
私はこの考え方が、とても好きです。
どちらかを否定しなくていいからです。
「お金なんてどうでもいい」と格好をつける必要もない。
かといって、「儲かれば何でもいい」と割り切る必要もない。
しっかり稼ぐ。
でも、人を騙さない。
利益を求める。
でも、自分だけが得をすればいいとは考えない。
言葉にすると当たり前なのですが、実際にはこのバランスが一番難しいのだと思います。
お金を稼ぎたいと思うことは悪くない
『論語と算盤』を読んでいて、少し気持ちが楽になった部分があります。
それは、

「お金を稼ぎたい」と思うこと自体を、後ろめたく考えなくていい
ということです。
お金は生活に必要です。
選択肢を増やしてくれます。
家族を守ることにも使えます。
好きなことをするにも必要です。
だから、収入を増やしたいと思うことはごく自然なことだと思います。
でも日本では、お金の話をすると少し露骨に感じられることがあります。
「お金のために働いています」
とは、なかなか堂々と言いにくい。
その一方で、現実には多くの人がお金のことで悩んでいます。
私はそこに、少し不思議さを感じます。
お金を求めること自体が悪いのではありません。
大事なのは、
どうやってそのお金を得るのか。
そこなのだと思います。
誰かを騙して得た一万円と、誰かの役に立って得た一万円。
金額は同じです。
でも、その一万円までの道のりはまったく違います。
『論語と算盤』は、その「稼ぎ方」まで含めて考えさせてくれる本です。
目先のお金と、長く残る信用
この本を読んでいると、何度も「信用」という言葉について考えます。
信用というのは、目には見えません。
銀行口座の残高のように数字で確認することもできません。
それでも、仕事をするうえではとても大切なものです。
約束を守る。
嘘をつかない。
できないことを、できると言わない。
分からないことを、分かったふりをしない。
人を利用して自分だけ得をしようとしない。
一つ一つは小さなことです。
そして、その場だけを見れば、正直であることで損をすることもあるかもしれません。
でも長い目で見れば、
「あの人なら信用できる」
と思ってもらえることは大きな財産になります。
逆に、一度失った信用を取り戻すのは簡単ではありません。
これは会社経営だけの話ではないと思います。
会社員でも、フリーランスでも、副業でも、ブログでも同じです。
そして私は、投資にもどこか通じるものがあると感じました。
目先の利益ばかり追いかけると、判断が雑になる。
焦ってルールを曲げる。
「今回だけは」と自分に都合のいい解釈をする。
そういう積み重ねは、どこかで無理が出てきます。
商売でも投資でも、長く続けるためには、自分なりの基準を持っておくことが大切なのだと思います。
成功者の本なのに、成功だけを追いかけていない
渋沢栄一と聞くと、どうしても「成功者」という印象があります。
多くの企業や組織の設立に関わった人物。
そんな人の本ですから、読む前はもっと、
「努力しろ」
「結果を出せ」
「成功をつかめ」
という内容を想像していました。
でも、私が読んで感じたのは少し違いました。
もちろん努力の大切さは語られています。
ただ、それ以上に、

「どんな人間であるか」
という部分を大事にしているように感じます。
どれだけお金を持っているか。
どれだけ会社が大きいか。
どれだけ社会的に評価されているか。
それだけで人間の価値は決まらない。
今の時代は、数字があまりにも見えやすいと思います。
年収。
資産。
売上。
フォロワー数。
アクセス数。
いいねの数。
数字は分かりやすいので、気がつくと自分まで数字で評価してしまいます。
でも人間には、数字にならない部分があります。
誠実さ。
信頼。
人への接し方。
失敗したときにどう振る舞うか。
誰も見ていないところで何をするか。
私は『論語と算盤』を読んで、そういう部分も大事にして生きたいと思いました。
今の時代だからこそ、この本が刺さる
『論語と算盤』は古い本です。
考え方や表現に、時代を感じる部分もあります。
それでも、私は今の時代に読む意味が大きい本だと思います。
今は、一人でもお金を稼げる方法がかなり増えました。
副業。
投資。
ブログ。
SNS。
動画配信。
ネット販売。
昔に比べれば、会社に勤める以外にも収入を得る方法があります。
それ自体は、すごく良いことだと思います。
ただ、選択肢が増えたからこそ、
「どう稼ぐか」
を自分で決めなければならなくなりました。
短期間で稼げる方法。
楽に見える方法。
刺激的な成功談。
そういうものが毎日のように目に入ってきます。
見ていると、どうしても焦ります。
「自分ももっと稼がないと」
「早く結果を出さないと」
そんな気持ちになることもあります。
でも、そこで一度立ち止まって、
「その稼ぎ方を、自分は本当に続けたいのか」
と考える。
『論語と算盤』は、そんなブレーキの役割もしてくれる本だと思います。
分かっていることを、もう一度考え直す本
正直に言えば、『論語と算盤』に書かれていることのすべてが、新しく感じるわけではありません。
誠実であること。
約束を守ること。
努力すること。
信用を大切にすること。
昔から言われていることばかりです。
でも、人間は分かっていても忘れます。
私もそうです。
目先の結果が欲しくなる。
人と比べる。
焦る。
楽な道があれば、そちらへ行きたくなる。
だから私は、こういう本には「新しい知識」とは別の価値があると思っています。
何かを教えてもらうというより、

自分が大切にしたかったことを思い出す。
そんな本です。
「最近、自分は数字ばかり見ていなかったか」
「結果を急ぎすぎていなかったか」
「本当はどういう働き方をしたかったんだろう」
ページをめくりながら、そんなことを考える時間が生まれます。
私が『論語と算盤』をおすすめしたい理由
私がこの本をおすすめしたい一番の理由は、単なるビジネス書ではないからです。
仕事の本でもある。
お金の本でもある。
生き方の本でもある。
そして最後は、

「自分はどんなふうに生きたいのか」
というところに戻ってきます。
たくさん稼ぎたい。
成功したい。
それは悪いことではありません。
むしろ、自分の人生を良くしたいと思うことは自然なことです。
ただ、その途中で、
自分が嫌いになるようなことはしたくない。
人を傷つけてまで得をしたくない。
信用を切り売りしてまで成功したくない。
私はそう思います。
お金を大切にする。
でも、人も大切にする。
自分の利益を求める。
でも、自分の良心も置いていかない。
たぶん、ずっと完璧にできる人はいません。
私もできません。
だからこそ、迷ったときに戻ってくる考え方があると助かります。
『論語と算盤』は、その一つになってくれる本です。
仕事について悩んでいる人。
副業を始めようとしている人。
投資をしている人。
もっと稼ぎたいと思っている人。
そして最近、少し結果を急ぎすぎている人。
そんな人に、一度読んでほしいと思います。
読み終えたからといって、すぐに人生が変わるわけではありません。
収入が増えるわけでもありません。
成功の答えが書いてあるわけでもない。
でも、
「私は、どんな方法でお金を稼ぎたいんだろう」
「自分にとって、本当の成功って何だろう」
そう考えるきっかけを与えてくれます。
それだけでも、十分読む価値があります。

論語だけでもない。算盤だけでもない。
どちらも大切にしながら生きていく。
難しいけれど、だからこそ忘れたくない。
私にとって『論語と算盤』は、お金や仕事に迷ったとき、もう一度自分の足元を見直させてくれる一冊です。

